令和5年度

コロナ禍で分断されてしまった地域のつながりを紡ぐことを目的に、区内の保育園・幼稚園と高齢者・障害者施設・高齢者向けサロンが手作りのおたよりや訪問などを通じて交流する「おたよりでつなぐ”まごころ”プロジェクト」。
令和5年度は68の施設・団体にご参加いただきました。

~本プロジェクトにまつわる7施設・団体のエピソード~
株式会社ニチイケアパレス ニチイホーム勝どき
生活相談員 大森一美さん

●プロジェクト参加への思い  
コロナ禍が収束しつつあり「地域との交流を図りたい」と思っていた時に社会福祉協議会からお声掛けしてもらったことが参加のきっかけです。入居者の皆様はもともと中央区にお住まいの方が多いため地域 に根ざした活動をしたい、地域の一員と役割を果たしたいと思い参加いたしました。

●交流時の様子・後日談、交流で感じたこと
入居者の皆様は核家族で生活していたため小さいお子様と交流 する機会は多くありませんでした。そのため、園児たちとの交流として実施しているお誕生日会は本当に喜ばれています。交流時は認知症により普段の表情が乏しい方がにっこり笑顔を 浮かべる様子や、発語がなかなか難しい方が「ありがとう」と一言発する様子が見られ、私たちがなかなか引き出せなかった入居者の持つ力を引き出すことができました。園児たちにとっては入居者の皆様は曽祖父母にあたる世代でなかなか交流することがないかと思いますが、とてもフレンドリーに交流してくれました。すでに3回交流しましたが(※取材時)毎回入居者も園児たちも交流を楽しみにしてくれています。交流する園児たちは毎回同じクラスのため、「また来月くるね!」と言ってくれます。1人ずつプレゼントをいただきとてもありがたいです。今後はレクリエーションの際に作品を制作し、その作品をプレゼントすることができたらいいなと思っているところです。

●プロジェクト参加による利用者、参加者、スタッフの変化
普段は職員がせわしく動いており、入居者の皆様に付きそってゆっくり参加する機会がなかなかありません。お誕生日会の際は可能な限り職員も参加し、夜勤明けの職員も一緒に参加して交流を楽しんでいます。入居者の皆様にとってお誕生日は「あと何回お迎えできるかわからない大事な日」です。そのため普段お部屋で過される方にもお誕生日会にご参加いただけるように職員が協力しております。

●今後、地域とのつながりのためにやりたいこと  
今回の交流は続けていきたいですね。また、ボランティアの方の特技や趣味を生かした交流もしていきたいです

社会福祉法人中央区社会福祉協議会
さわやかワーク中央 所長 増田由美子さん

●プロジェクト参加への思い
当事業所は東日本橋にて、障害者の就労継続支援B型として、軽作業や点字名刺作成、公園等の清掃を行う仕事をしています。社会福祉協議会が運営していることもあり、地域との交流を意識しておりますが、コロナ禍から利用者の健康面を考えて直接交流は行えていませんでした。5類となり久しぶりに交流出来ればと参加者を募り、4名の利用者で直接伺う事が出来ました。

●交流の様子  
しっかりした印象の年長組さんに迎えられて緊張気味でしたが、手話ダンス披露や手作りの切手看板贈呈、園児からのダンス、ハイタッチとプログラムが進むにつれて打ち解けて楽しんでいました。日ごろ中々得られない事業所外の方との交流の機会となり、園児にとっても普段接することが少ない障害のある方と接する機会から、多少なりとも障害への理解を深めてくれたと思います。

●行った内容、後日談  
普段から休憩中の気分転換として行っている手話ダンスを初め て外部で披露しました。参加するメンバー以外もダンスの練習に積極的に取り組み、施設全体で関わる事が出来ました。切手看板は以前から自主製品として販売している切手作品をよりアピールできないか、との考えから誕生しました。施設名の看板を 切手で作成したところ、可愛いと好評だったので、十思保育園さんにも喜んでもらえればと作りました。これまでの製品づくりの経験を活かして全員が関わり完成させることが出来ました。交流後の帰り道、利用者の誰からともなく「全員で歌いながらダ ンスすれば良かった」と自発的に反省会を始めたのには驚きました。また交流したい気持ちがあるようなので、引き続きの交流も検討しながら、事業所を地域にもっと知ってもらえるような活動を展開したいと考えています

ほがらかサロン京橋 リーダー 箱守由記さん

●プロジェクト参加への思い
ほがらかサロンは地域に住んでいる70歳以上の方を対象として、食事や懇談、レクリエーション等を行っています。普段は子ども達と一緒に過ごす機会が無いので、プロジェクトを通して交流出来たのはとてもありがたかったです。

●交流内容のアイデア
一回目は縁日を行いました。元々佃のサロンで縁日を開催した時に好評だったようなので、京橋でも行おうと考えていたところ、丁度プロジェクトの話もあり、せっかくなら子どもたちも含めて楽しめればと思い、開催しました。夏の暑い中を30分かけて歩いて来てくれて大変だったと思いますが、利用者も一緒にボール投げや魚釣りゲームを楽しむことが出来ました。  
二回目はモルック(フィンランドの伝統的なスポーツ。モルックと呼ばれる棒で数字の書かれたピンを倒して遊ぶ)を行いました。こちらは当初から予定していたレクリエーションでしたが、ルールを理解して楽しんでもらえました。一人だけ的に当たらず悔しくて泣いてしまった子もいましたが、先生とも確認を取って特別扱いせず、良い経験として楽しんでもらえたと思います。

●今後について  
引き続き交流をしていきたいと思っています。地域の特性上、核家族で周辺の子どもたちはお年寄りと接する機会も少ないと思いますし、こちらも元気をもらえるので双方にとって良い機会になっていると感じています。機会があればこども園さんにもお邪魔させて頂きたいのですが、歩いて伺うのは難しいので何かのイベントの際にお声がけ頂いて、外出のイベントとして伺えると嬉しいなと思います。

社会福祉法人東京児童協会 昭和こども園
園長 岩本恵子さん

●プロジェクト参加への思い
昭和こども園は、令和5年4月開所の新しい施設です。人や地域とつながることを大切に考えており、特に高齢者との関わりを持ちたいと思っているところに、このプロジェクトを知り参加を決めました。オフィスが多いこの地域では、高齢者と関わる糸口を見つけられなかったので、今回参加のお誘いをいただけたのはとても幸運でした。 

●交流の様子と後日談  
「ほがらかサロン京橋」の皆さんと、9月の初交流ではサロンでの縁日で玉入れや魚釣りゲームを、11月の2回目の交流では北欧発祥の木の棒を投げてピンを倒す遊び「モルック」を一緒に楽しみまし た。八重洲にある園から京橋までは、歩いて30分ほどかかります。お 昼ご飯の時間までに帰らなくてはいけないので、一緒に過ごせる時間は長くないですが、サロンの方たちは子どもたちの姿を見て「かわいいわね」と喜んでくれ、子どもたちは「モルック」の真剣勝負に勝 利して喜ぶ姿や、持参した折紙作品の遊び方を「教えてあげられ た」と喜ぶ姿が見られました。子どもたちから「次はいつサロンに行くの?」という声もあり、交流の意義を感じます。これから人口が減っていき、人との関わりが希薄になっていくことが想像されますので、今のうちに人との交流で得られる豊かな気持ちを育んでほしいと思います。

●プロジェクト参加による利用者・参加者・スタッフの変化  
ほがらかサロンへは子どもたちと私と職員で出向き、それぞれにとって貴重な経験となっていると思います。また、本園では「体験すること」を大切にしており、園児の保護者が先生を務める鮭の解体見学や、園と同じビル内にあるレストランでのパン作り体験を行っています。子どもたちには、こういったすべての体験を糧に、人とつながり、思いやりの心を育んでもらいたいです。

●今後やりたいこと  
このような交流を今後も続けていければと考えています。園のある八重洲はオフィスがとても多く、世界中の人、またこの地に住む人も大勢います。歴史も未来もあるこの地域で、ただ「過ごす」のでなく、一歩踏み込んで色々な方々、企業と「交流」していきたいです。

中央区立福祉センター 支援係長 佐藤勝さん

●「おたよりプロジェクト」に参加した思い(動機)
当センターは、障害のある方に対して、様々なサービスを提供している施設になります。
プロジェクトに参加する前から併設する区立保育園の園児と交流を図り、子ども達が先入観なく接する姿や利用者と交流する様子に感動してきました。そういった経験を通じ、多くの子どもたちと交流する機会を作ることが地域の方に「障害について知っていただくこと」、「理解していただくこと」につながると思い、プロジェクトに参加しました。

●制作物(おたより)作成時の様子
今回は版画を使ったカレンダーと紙皿を使った工作物を園児の皆さんにプレゼントしました。カレンダーは、毎年利用者が年末に作成しているもので、職員と一緒に干支の絵を書き版画にしてもらいました。紙皿工作は、子どもたちにも喜んでもらえるのではという思いから創作活動の紙漉きで作成した綺麗な紙を装飾に使い、サンタとトナカイを作り上げました。

●交流時の利用者の様子と後日談
昨年は子どもたちにハンドベルの演奏をしていただきました。一生懸命な子どもたちの姿に職員も含め、感激したのを覚えています。今回も制作物と歌のプレゼントをいただきました。利用者は普段と違う雰囲気に緊張していましたが、子どもたちの歌を聞いているうちに嬉しそうに変化する様子が見受けられました。
今年度は1回目の交流が台風の影響で中止になったため、福祉センターから保育園に出向くことができませんでした。是非、福祉センターからも出向いて実際に交流の場を設けたいと園長先生ともお話をしています。

●地域の子どもたちとの交流を通して感じたこと
子どもたちは、「障害者だから」、「障害があるから」と利用者を見ることなく、一緒にいろいろなことをやってくれます。これまでも花壇の清掃やお楽しみ会への参加、手話の披露など子どもたちと交流を図ってきました。子どものときにこのように障害者と交流することは、大人になって貴重な経験として様々な形で生かされていくのではないかと思っています。そういった意味でも子どもたちとの交流は重要であり、これからも子どもたちとの交流のチャンスがあれば交流の輪を広げていきたいと考えています。

●今後やりたいこと
障害のある方が地域で暮らし続けるために地域の方々に障害に対する理解を広げていくことが一番大切だと感じています。そのため、様々な取り組みを通じて、地域の方と交流する機会を作っていくことを大事にしていきたいと思います。
また、障害の有無に関わらず、地域で一緒に住み続けられる社会になるために少しでも地域とのつながりを広げていく力になれたらと考えています。

月島交流カフェ 成田房代さん

●プロジェクト参加への思い
月島交流カフェは、平成28年4月にマイホームはるみの職員の方が主体となって運営している活動でした。当初は参加者として通っていたのですが、翌年から住民が主体で行う活動にシフトすることとなり、私も運営者として活動することになり、7年経ちました。
日ごろは高齢者向けに体力維持として体操や脳トレ、なぞなぞをしたり、季節に合わせた童謡や栄養の話、手品などのプログラムを組んでおり、昨年からは毎月誕生月の方のお祝いもしています。12~18人ぐらいの参加者の皆さんに楽しんでもらっています。

このプロジェクトについては広報用冊子を拝見していて、老人ホームなどに園児が訪ねて交流している様子があり、利用者はとても元気になるだろうなと思っていました。今回月島交流カフェも参加のお話をいただき、是非参加したいと思いました。

●交流の様子と参加者の反応
園児と月島交流カフェの参加者が一緒に歌を歌ったり話したりといった交流ができたらいいなと思っていましたが、インフルエンザが流行していた時期でしたので、保育園との話し合いの結果、短い時間での交流となりました。
当日は、園児が一生懸命作ったプレゼントをいただいて、みんなで一緒に写真を撮りました。
短い時間の対面でしたが、参加された方がすごく嬉しそうな顔でプレゼントをお持ち帰りになり「かわいかったね」とおっしゃっていたことが印象的でした。予想以上に皆さん喜んでいらしたので、参加してよかったなと感じました。

●後日談
先日の月島交流カフェで園児にお礼をしたいという声が参加者より上がりました。色のついた紙をハートやクローバー、花などの形に切って園児へお礼の言葉を書いていただき、折り紙と一緒に画用紙に貼って束ねたものを、保育園へお届けしました。
その他にも、新1年生になる年長の園児が来てくれたので、折り紙でランドセルを折って差し上げたいなと考えています。

●以前からの保育園とのつながり
私が民生委員だった時に保育園の第三者委員をしていました。日にちは経っていましたがお互い見知った間柄だったのでスムーズにお話ができました。

●プロジェクトの感想
今回は短い時間での交流でしたので、次回は一緒に遊べたらいいな、一緒に何か作れたらいいなと思っています。
自分たちから働きかけて幼稚園や保育園にいきなり「交流してください」っていうのはなかなか言えないし、このプロジェクトに参加していなかったら、交流のきっかけはなかったと思います。良い機会をいただき感謝しています。
私は月島交流カフェの交流以外にも、カンポレアルマドリードでいち参加者として園児と交流させていただきました。一緒にミニフットゴルフなどしたんですけども、その時は童心に帰り、こちらが遊んでもらったような感じでした(笑)園児がこちらの残ってる元気を引き出してくれるように感じました。

●プロジェクトをとおしての今後の展望
最近挨拶を返してくれない子が増えてきたとよく聞きます。私の住むマンションでも挨拶は返してくれますが、あまりハキハキと返事はしてくれません。どうしてなのかなと思ったら、学校では「知らない人に声かけられたら返事しちゃ駄目」と指導しているという話を聞き、交流のきっかけとなる挨拶から断ってしまうのはすごく寂しいことだなと感じました。
プロジェクトをとおして、地域の高齢者と園児が顔の見える関係となることで、地域で遭遇した際に気さくに声を掛け合える地域になってほしいなと思います。また、日頃関わりが薄く、学ぶことが少ない高齢者像というものを学んでもらえるきっかけになればと思います。例えば足の悪い高齢者が交差点を渡りきれなさそうなときに声をかけて一緒に歩いてあげるとかそういう優しい子が育つ地域になるといいなと感じています。

勝どき敬老館 館長 近藤 剛さん

●プロジェクト参加への思い
地域の方へのサービスを提供している中で、他の団体や他の世代との交流を増やしていくのを課題としていますが、今年度は特に他の世代との交流に力を入れようと考えていたところに、社会福祉協議会の方からお話しをいただき、参加を決めました。

●交流時や交流後の様子について
今回交流したのは館内での講座の1つ、「読み聞かせ劇場」という講座に「ほっぺるランド勝どき」の園児さんをお迎えしました。1つの絵本をページごとに複数人で順番に読んでいくものです。
園児さんにとっては普段見聞きしている1人での読み聞かせとはまた違って、新鮮に感じられたかと思います。代わるがわる読むことで、それぞれの個性が出て面白いんですよね。
園児さんが来ると雰囲気が変わりますね。講座に参加している方々の目がきらきらしていたのが印象的でした。今回はプロジェクトに初めて参加しましたが、これから交流する保育施設も増やしていきたいですね。
交流後は、「楽しかった」、「また来てほしい」という声が多かったです。
園児さんからのプレゼントであるカレンダーも皆さんとても喜ばれていましたね。

●今後、地域のつながりでしてみたいことは?
多世代交流として、区内の小学校のブラスバンド部をお呼びして、館内で演奏会を開催したいと考えています。
小学生も練習しているが演奏を披露する場があればという声もあったようなので、お互いにとって良いことなのかなと思っています。
以前、児童館にちぎり絵講座の卒業生がちぎり絵を教えに行っていて、好評だったのですが、担い手の方が高齢になったこともあり、長年続けていたものの終了してしまったので、新たな交流が始まればと思っています。
こちらから出向くことはなかなか難しいですが、館内で自主練習をしているコーラスやオカリナ、ギターのサークルは外部活動を行っています。おとしより相談センターや通いの場で披露することがありますが、高齢者が利用している場に限らず、他のところにも出張できればと考えています。
また、区内の各敬老館がどのようなことをしているかは知っていますが、意外と交流の機会が少ないため、今後は敬老館同士の交流も行っていきたいですね。

中央区社会福祉協議会 参加法人一覧